顧問先の獲得方法
独立開業するための一つの基準として、顧問先20件を目安とすべきことは独立するタイミングをご覧ください。
問題は、いかにして20件を獲得するかです。
これから整理する顧問先の獲得方法について、自分に合った方法を見つけて実践していただきたいと思います。
① 全くの新規獲得の方法
② 顧問を前提に紹介をいただく方法
③ 勤務先の事務所の顧問先を奪い取る?
① 全くの新規獲得の方法
黙って真面目に弁護士業を営んでいても、勝手に顧問先が増えるということはありません。
出会い、人脈、営業力といった司法試験では勉強しなかった機会や努力が必要となってきます。
少しでも多くの経営者や決裁権者と出会うこと、その人脈を大切にすること、ときには気合いを入れて営業すること、このような努力ができない人は、一生イソ弁としてやっていくか、インハウスロイヤーになる方が向いているでしょう。インハウスロイヤーになることは、今時ポジティブな話です。
顧問先を新規獲得しないことには独立開業の道は開かれません。
基礎的なことからできているか、ここで確認していきましょう。
経営者とはどのようにして出会うのでしょうか。
まずは何でもいいから経営者の交流会や、セミナー、飲み会、パーティに出席してみるべきです。できれば月に1回とか、定期的に開催されている会が良いでしょう。
お酒は飲めなくてもなんとかなります。
そういう会は苦手だ、と思う方は考えてみてください。これは仕事です。
憲法が苦手だから司法試験を受けないということが許されますでしょうか。
人と話すのが苦手だから依頼は受けないということが許されますでしょうか。
独立開業したいのであれば、苦手などという言葉は使わず、積極的に参加してみるべきです。
問題は参加してからです。
1回の参加で、例えば20人と名刺交換したとしても、そのほとんどは一度きりしか会わずに終わってしまうのです。
これが、定期開催の会であれば、2回目以降に徐々に親睦を深めていくことができるので、定期開催の会がお勧めです。
1度きりの会であれば、その中で、かならず1人とは仲良くなることを心がけてください。
ある程度話して気が合いそうな人や、ビジネスでつながることができそうな人をターゲティングして、その人にくっつけば良いのです。
その後はfacebookやその他のSNSでつながって、継続的にやりとりをして、2度目、3度目、会う機会を増やしていきましょう。
大事なのは、このような会への出席と、つながりを複数続けていくことです。
1年程度では成果が出ないかもしれませんが、2~3年やれば、必ず成果が出ます。
facebookで久しぶりにメッセージがきたと思ったら、それは法律相談であることが多いです。
最初は無料または格安で対応し、相手にとって「困って弁護士が必要になったらこの人」と思ってもらうことが大切です。
それが経営者であれば、いつしか顧問の打診がくるはずです。
「いつもタダで聞いてもらって悪いので、お支払いさせてください。」という話があれば、そこで顧問契約の話をしましょう。
顧問先の件数が5件以下の状態であれば、最初は勉強もかねて安い顧問料でも受任すべきです。
超過料金をいただいたり、作業量が増えれば基本料を上げることも交渉可能です。
さらにレベルアップすれば、得意分野について、ホームページを作成しましょう。
例えば、ITベンチャーに特化したホームページを作っておけば、そのホームページだけで自動的に集客することができなくても、出会った経営者がITベンチャーであれば、名刺をいただいた翌日に、ご挨拶と共にそのホームページで宣伝することができます。
最終形は、アポをとって営業することです。こちらから、顧問弁護士をつけるメリット等について説明するために時間を下さいと言って、経営者に直接営業しましょう。
事前に対象会社のビジネスモデルを十分に把握して分析し、どのような点に法的リスクがあり、顧問をつけることにメリットがあるか、仮説を立てましょう。
うまくアポがとれたら、その仮説が合っているかどうかの感触を伺いながら、合っていれば来月からでも顧問契約をしていただくことを勧め、合っていなければ別のソリューションを示すことや、今後の取引につなげられるようにうまく提案しましょう。
② 顧問を前提に紹介をいただく方法
顧問弁護士を探している企業の紹介をいただくことができるのは、既存の顧問先か、知り合いの弁護士からということが多いです。
不思議なことに、紹介してくれる人はどんどん紹介してくれます。
それは、その人のところにお悩み相談が来るということで、その人の信用力が高いから。
また、その人から自分への信用、信頼があるからです。
そのような人をどんどん増やしていくことが肝要です。
それはもう日々の研鑽と顧客対応を良くすることしかありません。
顧問先からの質問の回答は、最初の返事は一日以内に必ず、作業に時間がかかりそうな場合は目安時間を提示すること、時には無理をしてでも間に合わせること、これらの積み重ねしかありません。
報われるときが必ずくるのです。
③ 勤務先の事務所の顧問先を奪い取る?
独立開業した時や、パートナーに昇格した時に、以前のボスや上司の顧問先が、あなたを顧問にしたいという意向を示した場合には、考え方は様々ですが、胸を張って顧問契約をすべきだと思います。
ボスやパートナーは、そのような事象については織り込み済みである可能性が高いですし、顧問先をグリップできず、部下にとられたことについて、とやかく言う筋合いはないでしょう。
何より、顧問先の意向として、どの弁護士に依頼したいか、です。
担当弁護士として会社の事情をよく知っていること、その会社に評価されていること、その結果オファーをいただいたのであれば、胸を張るべきです。
もちろん、恩義を通す意味では、ボスや上司にはきちんと報告すべきです。
以上見てきた通り、顧問先を獲得することについては、頭がいいとか司法試験の成績が良いとかいう話とは全く別の、涙ぐましい努力が必要です。
イソ弁時代から努力をして、20社獲得出来たら独立開業を目指すというのがいいのではないでしょうか。
健闘を祈ります。