弁護士として独立したいけれどもタイミングが難しい、という人は、以下のような整理に従って検討してみてください。基本的には、①のポジティブな独立以外は推奨されない前提です。
① ポジティブな独立
弁護士としての経験やノウハウが備わってきた。
顧問先からの収入だけで事務所の運転資金と生活費の目途がついた。
→なぜこのような状態で独立することが必要か、一度あらためて考えてみましょう。
② ネガティブな独立
イソ弁だけれども、事実上のクビを通告された。
就職が決まらずに速独せざるをえなかった。
→なぜこのような独立がヤバイのか、こうならないようにどうするか、仕事術・マインドなどにも秘訣があります。
では、順次みてきましょう。
① ポジティブな独立
企業法務と一般民事とで、弁護士としての経験やノウハウが備わってくるタイミングは大きく違うのではないでしょうか。
感覚としては、企業法務は7~8年、一般民事は3~4年といったところかと思います。
企業法務の場合には、そもそも企業の法務部では対応や判断が難しい問題を処理するので、同じような案件が集積されず、また、新しい分野が次々と現れて、なかなか経験を積みにくいという特徴があります。
一般民事であれば、債務整理であれ離婚であれ、同じ分野であれば、勘所や手続と交渉の進め方は共通するものがあり、同じ案件を4~5件こなせば比較的その後の対応はスムーズということになります。
その意味で、独立のタイミングとしては、企業法務中心であれば7~8年、一般民事中心であれば3~4年が目安となってくるのではないでしょうか。
次に、当然ながら、一般民事を中心とする場合であっても、顧問先からの収入だけで事務所の運転資金と生活費の目途がつくという状態で独立するのがベストです。
なぜなら、そのような状態でなければ、独立当初、案件獲得を焦るあまり、無理な事件や、本来受任すべきではない事件まで受任することになってしまい、業務効率が大幅に下がったり、不当な懲戒請求を受けたり、人によっては鬱病になったりするということが、ごく普通に生じるのです。
弁護士として将来の飛躍のための礎を築くことができないままに、一生不安定な小さな事務所のままに終わってしまうということになりかねないのです。
そこで、企業法務と一般民事と、どちらを中心にするにせよ、一つの基準としては、1社5万円で20社顧問、月100万円の安定収入がある状態を一つの独立するタイミングとして提唱したいと思います。
独立当初は暇なので、この20社に対して親切な対応をしていれば、さらに紹介で企業の顧問を獲得したり、役職員に関する一般民事の依頼を受けられることが期待できます。最初の暇なときに、無理な案件を請けるのか、良い案件に全力でエネルギーを投下するのかで、その先が大きく変わってくるのです。
独立を志すのであれば、イソ弁のうちに顧問先を獲得するということが肝要になってきます。
顧問先の獲得方法についてはまた別の機会に述べます。
② ネガティブな独立
イソ弁だけれども、事実上のクビを通告された、就職が決まらずに即独せざるをえなかった、このような独立は絶対NGと言っても過言ではありません。
どんな条件の悪い事務所でもいいから独立ではなく転職をして、もう少し経験とノウハウを積んで、ポジティブな独立ができるまで待つべきです。
なぜなら、イソ弁としてすら役に立たない弁護士が、事務所を経営してうまくいくはずがないからです。即独も同様です、イソ弁としての経験を積んだ弁護士からすると、即独なんて、信じられないくらい怖いことです。
最悪は地域を問わずにひまわり求人で応募してみるとか、インハウスロイヤーになることはむしろポジティブに考えるべきだと思います。
このあたりで悩まれている方は同期などによく相談してみてください。
弁護士の転職市場は意外と活況であり、良い人がいれば取りたい、という事務所はたくさんあります。また、ひまわり求人には出していないけれども、紹介であれば検討する、という事務所もたくさんあります。
最大限コネを使って転職をし、ポジティブな独立ができるようになるまで力を蓄えるようにしましょう。