ちょっと疑問ですが、額面19万円の給与等でも事務員採用の応募は来るのでしょうか。
ひまわり求人や、各弁護士会の事務員求人情報を見ていると、20万円を切るような提示もまま見受けられます。
もちろん事務員さんの給与相場が高くなれば、首を絞められるのは弁護士側ではありますが、その能力や経験は、大企業の事務職とも遜色ない、事務所にとって不可欠の存在となることも多い事務員さんに、どれほどの待遇を提供すべきかは悩みの種です。
弁護士は事務員さんなくしてはまともな仕事をすることができません。
事務所をすでに経営されている弁護士も、これから独立開業しようとする弁護士も、あらためて考えてみる機会をここで設けたいと思います。
まず、肝に銘じておかなければならないのは、雇用契約において最も重要なことは、安定です。また、ボスや上司から評価されていることの充実感を得ながら所内で役割を果たしていくことの充実感を持ってもらう必要があります。
雇う側が十分に評価していると思っていても、態度や待遇に反映させなければ意味がないです。
他方で、たまたま儲かった年に大きなボーナスを出したり、基本給をアップさせても、一時的には喜んでもらえますが、翌年違う対応をすれば、簡単に不平不満が生まれてしまいかねません。
長く働いてもらうには、事務員さんのモチベーションを理解する必要がある
良い事務員さんに、長く、気持ちよく働いてもらうためには、まずはそのモチベーションについて検討してみることも大切ではないでしょうか。
人材業界でよく言われる働くモチベーションを、法律事務所に置き換えると以下の4つがポイントになります。
① 事務所という組織の成長や発展に貢献したい
② 事務員の仕事自体にやりがいがある
③ 事務所の人とのつながりが大切
④ 勤務条件が良い(ワークライフバランス重視)
こうしてみると、あの事務員さんが働いている理由は③④だなとか、①だなとか、どこかに当てはまってくるものだと思います。
また、逆に雇う側としてはどれを重視するのか?
ビジョンをあらかじめ明確にしておくと、採用前と後の認識のギャップがなく、うまく雇用が続けられるのではないでしょうか。
今一度、①~④のどの要素を重視するのか検討した上で、事務員さんとその認識がズレていないか、しっかりと個別にお話し合いをしてみることをお勧めします。
もちろん、すべての要素を兼ね揃えることがベストであることは言うまでもありませんし、最低限、不平不満が生まれたり、突然来月辞めますというようなことを言われないために、良い環境を作るためには、昇進基準等を明確にしておくことが肝要だと思われます。
昇進基準を明示することで、不平不満の生まれにくい環境に
現状、就業規則すらまともに用意していない法律事務所が少なくない中で、昇進基準を明確にするということはハードルが高いとも思えますが、格式高い基準を用意する必要はなく、A4サイズの書面に1ページで簡単に明示するだけでも、その効果は絶大です。
昇進基準については、以下のような項目で定めるべきです。
① 毎年必ず上がる基本給
大手企業であれば5000~1万円程度だと思います。
5000円前後でも増額することを確約することで、1年頑張ったことの評価を形にすることができます。
20年の勤務で10万円上がることになりますが、その貢献を考えれば妥当ではないでしょうか。
② 役職手当等
事務員さんも、成長して多くのことを学び、多くのスキルを身に着けることになります。
また、複数の事務員さんがいる中で、特別な役職があれば、それに対する評価も形にするべきです。
他の人よりもプラスでやってもらっている分に見合った対価は支払うべきです。
③ 賞与
法律事務所の賞与は、なしか、年に2回、1~2か月分ずつというところが多いのではないでしょうか。
事務所によって、いくらを保証するのか、また、どのような条件で増減するのか、なるべく明確に、また、本人の努力が反映する形で決める基準を明示すべきです。
以上見てきた通り、事務員さんのモチベーションを意識しながら、昇進基準を定めて運用すべきです。
いまだに社保にも入っていないというような法律事務所も多いと思いますが、論外です。
良い事務員さんに、長く、気持ちよく働いてもらうため、工夫を凝らして、前近代的な法律事務所ではなく、ホワイトな大手企業なども参考にしていくべきです。
思い立ったら今日から理念と昇進基準を明確にしましょう。