過払い案件を大量にこなした若手の証言

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最近ではさすがに少なくなってきたと思いますが、過払い金請求は弁護士業界で一世を風靡し、大儲けした弁護士も相当数いることと思います。

かくいう私も、弁護士になってから3年間は、過払い案件を相当数担当していました。

一人の弁護士が、依頼者数で月に30~60人くらい、債権者数で月に100~200件近くを受任するというような、ありえない時代でした。

弁護士になって1週間で、過払いの裁判に一人で出廷した、というような話もよく聞きます。

裁判も膨大な件数こなしましたので、いろいろと思うところがあります。

この機会に、過払い案件を大量にこなして良かったことと、その弊害について述べてみたいと思います。

目次

過払い案件をこなして良かったこと

若くして多くの(大量の)依頼者と一対一で面談する経験ができたこと

過払いでなければ、弁護士になってすぐに一人で面談に入るということはなかなかできません。

一人で入って受任をして、その後も責任を持って依頼者とコミュニケーションをとるという経験は、それなりに価値のあるものだったと思います。

ただし、某大手過払い事務所などですと、受任後はベルトコンベアのように、事務局や訴訟担当のような弁護士に移管されて、最後まで責任を持って対応するということが経験できないとも聞きます。

業務の効率化という観点からはそれも良いと思いますが、一人の弁護士が受任から最後まで責任を持つということは弁護士にとっても依頼者にとっても効率化に代えがたい価値であるように思います。

若くして裁判所に一人で出廷し、面倒な支配人や裁判所とやりあう経験を積めた。

過払い案件でなければ、新人が一人で出廷することや、悪く言えば惰性で出廷すること、二日酔いでぼーっとしたまま出廷することは許されないでしょう。

ですが過払い案件ではそれが許されていたように思います。

その結果どうなるかというと、裁判所でも全然緊張しなくなるのです。

悪く言えば緊張感がないのですが、よく言えば度胸がすごいのです。

私も過払いの裁判には惰性で週10回とか、とんでもない回数を出廷していたので、裁判所で全然緊張することはないです。

そもそも私は人前で緊張するタイプの人間ですが、過払い以外の裁判で、初めて証人尋問をしたときに、全く緊張しなかったのが不思議でした。

振り返ってみると、過払いの裁判に腐るほど出廷しており、自分にとって裁判所が緊張の場ではなくなっていたからだと思います。

過払い案件を大量に担当したことの弊害

若いときに勝ち負けの見通しが微妙な裁判で負けるという経験ができなかった。

過払い案件はほとんどが勝てますし、いわゆる取引の分断や冒頭ゼロ計算など、争点があるものもだいたい先が読めるので、訴訟戦略をほとんど考えずに迅速大量処理を優先させてしまいます。

交通事故もこれに近いですが、交通事故は争点によっては非常に専門性が要求され、それこそ弁護士によって結果が大きく変わるということも過払いに比べれば多いでしょう。

私は弁護士になって3~4年目に、勝ち負けが微妙な案件で負けて、気が付きました。

自分は訴訟戦略を全然意識していなかったなと。

単に、こういう証拠があって、こういう請求をするからと、証拠を出す順序や、裁判官の心証を丁寧に取りながら進めるということを意識せずに進めていたことを反省しました。

リサーチも不足していたと思います。簡単に勝てる過払い案件をやり過ぎたことで、裁判をなめてしまっていたのだと思います。

それに気が付いてからは、まず、自分の感覚では勝つために必要な検討が足りないということを自覚するようになりました。

裁判官の心証をとる、という作業の意味と必要性について、今はだいぶ理解しているつもりです。

控訴審でひっくり返る、という経験を何度かして、裁判官の心証がとても大事なことだと痛感するようになりました。

要点を絞った主張書面、タイムリーな証拠提出、期日での対面でのやりとりから、いかに有利な心証に持っていくことができるか、今はそれしか頭にありません。

過払い案件を大量に担当していて、まだ抜け出せていない人は、上記のことを参考にしてみてください。

ある意味自信を持って良い部分もありますし、改善しなければならない部分も多くあると思います。

難しい訴訟で、戦略を立てて心証を取り、勝訴判決を得る、弁護士の醍醐味を年に1回くらいは味わいながら弁護士人生を謳歌したいですね。

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