はじめに
さて、タイトルにもある通り、今年はお札が変わる年です。
具体的には、2024(令和6)年7月3日から、新しい一万円札(渋沢栄一肖像)、五千円札(津田梅子肖像)、千円札(北里柴三郎肖像)が発行されます。
では、これらのお札の種類や絵柄については、一体いかなる根拠に基づいて定められているのでしょうか?
本記事では、お札にまつわる法律の根拠について紹介していきたいと思います。新しくお札が変わるのを機に、お札に関する法律についても知っておくと良いかもしれません。
お札にまつわる法規
法律の規定
まず、お札についての法律上の根拠は「日本銀行法」(平成九年法律第八十九号)に定められています。
この法律は、日本銀行の役割や組織について定めるもので、例えば、日本銀行の理念は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」(同法第2条)ことであり、その「自主性は、尊重されなければならない」(同法第3条1項)ことや、その法的地位は「法人とする」(同法第6条)ことなどを規定しています。
そして、この法律の第5章は「日本銀行券」について規定しています。
「日本銀行券」とは、文字通り日本銀行が発行する銀行券のことであり、いわゆる紙幣(お札)のことです。
なお、貨幣(硬貨)については、別途「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和六十二年法律第四十二号)において、発行の方法や種類などが規定されています。
紙幣と貨幣の発行の違いについて、詳しくはこちらを参照してください。
この「日本銀行券」の種類は、法律上は以下のように定められています。
(日本銀行券の種類及び様式)
第四十七条 日本銀行券の種類は、政令で定める。
2 日本銀行券の様式は、財務大臣が定め、これを公示する。
上記の規定から分かる通り、実は、「日本銀行券の種類」も「日本銀行券の様式」も直接法律で定められているわけではなく、政令や財務大臣の定めという下位規範に委任されています。
政令・告示の規定
このうち、「種類」に関しては、内閣が定めた「日本銀行法施行令」(平成九年政令第三百八十五号)において、以下のように規定されています。
(日本銀行券の種類)
第十三条 日本銀行券の種類は、一万円、五千円、二千円及び千円の四種類とする。
一方、新たに変更されるデザインや肖像などに関する「様式」については、令和5年12月15日付の「財務省告示第三百十四号」において、詳しく定められています。
具体的には、一万円、五千円、千円について、それぞれの項目ごとに以下のような定めがあります。
寸法 | 用紙 | 色(表) | 色(裏) | |
---|---|---|---|---|
一万円 | 縦:76mm 横:160mm | すきいれ(透かし)等 | 肖像、文字、絵柄、線/地模様/印章/記号、番号ごと | 文字、絵柄、模様/地模様/印章ごと |
五千円 | 縦:76mm 横:156mm | 同上 | 同上 | 同上 |
千円 | 縦:76mm 横:150mm | 同上 | 同上 | 同上 |
このうち、例えば「色」については、新一万円札の表面の肖像等の部分が「暗い灰みの黄赤及び暗い灰みの緑」と非常に細かく定められています。
まとめ
このように、お札に関する直接の法律上の根拠は、日本銀行法ですが、具体的な内容や新しいデザインについては、より細かい政令や告示で規定されています。
新しいお札が発行された暁には、こうした細かい法構造を思い浮かべて、少しでも楽しんでもらえれば幸いです。