相続税納税は、弁護士にとって他人事ではない?
かつて、「相続税って、超富裕層だけに関係あること」という認識が強かったようです。
しかし、いまでは、東京都においては約13%の人が関係する、「比較的身近な税」という状況です。
弁護士として活躍し多額の弁護士報酬が入る、また独立開業し、法律事務所として儲ける、といった形で弁護士の方々は、一般のサラリーマンよりも、大きな資産を築く可能性が高い仕事です。
また、相続関係の問題は、弁護士として関わることも多い事案ですので、比較的身近な事とは思いますが、「自分が納税する」あるいは「自分の子孫が納税する」という観点でも、実態を知っておいた方がいいでしょう。
最新の東京都における相続税申告概要
2020年12月21日に、令和元年分の相続税の申告事績が東京国税局より発表されました。これによると、令和元年分における被相続人数、つまり、亡くなった方の数は 276,925 人で、そのうち 相続税の申告書の提出する必要のあった被相続人数は 36,145 人でした。
令和元年分における相続税の申告事績の概要(東京都)
死亡者数(①)に対する相続税の課税件数の割合がどれくらいかを計る課税割合(③)は、令和元年では13.1%、実際に課税があった被相続人(死亡者)の数は100人のうち約13人、約7.6人に1人の割合で相続税が発生したということになります。
課税価格(⑤)は、相続財産価額に相続時精算課税適⽤財産価額を加え、被相続人の債務・葬式費⽤を控除し、相続開始前 3年以内の被相続人から相続人等への⽣前贈与財産価額を加えたものを言います。令和元年は総額5兆8,038億円でした。
そのうち、相続税として実際に課税された税額(⑥)は、8,692億円です。そして、被相続人1人当たりにすると(⑧)、およそ2,405万円と、かなり高額になります(計算上の平均です)。13人に1人の割合で、相続税がかかっているということ、また、相続税として多くの額を納税している人がいるということです。
被相続人数・課税対象被相続人数の推移(東京都)
次に被相続人の推移を見ていきましょう。平成27年に相続税の基礎控除額が縮小されたことで、課税対象となる被相続人の数が一気に増えましたが、その後も上昇傾向にありましたが、令和元年は前年比98.3%と若干減少しています。
相続税の課税価格及び税額の推移(単位:億円)
やはり、こちらも課税割合同様、課税価格もH27年を境に大きく上昇しています。
相続財産の⾦額の構成⽐推移
最後に相続財産の内訳について見てみます。平成22年の時点では約半数を占めていた土地が、令和元年では37%にまで減少しています。代わって現預⾦と有価証券の割合が増えています。
土地の割合が減少しているとはいえ、都内の地価自体は近年上昇傾向にあるため(コロナショックの影響が今後どう出るか分かりませんが・・)、相続財産が高くなったことに伴って相続税も多額に上る一方、十分な納税資金が確保されないとのリスクが生じるおそれがあります。
納税資金が十分ではないが為に、相続税の申告に支障をきたすことがないように、しっかりと自身をとりまく、相続について検討する必要があるといえるでしょう。