弁護士の確定申告基礎知識③ 弁護士が所得を分類する際の注意点

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弁護士の確定申告について考える際、最初に重要になってくるのが「所得の種類」です。

目次

所得の種類は10種類

所得税法では、その性格によって所得を10種類に区分しており、所得の種類ごとに計算方法や取扱いが異なります。

  • 1)利子所得:公社債や預貯金の利子、貸付信託や公社債投信の収益の分配などから生じる所得。
  • 2)配当所得:株式の配当、証券投資信託の収益の分配、出資の剰余金の分配などから生じる所得。
  • 3)不動産所得:不動産、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得。
  • 4)事業所得:商業・工業・農業・漁業・自由業など、事業から生じる所得。
  • 5)給与所得:給料・賞与などの所得。
  • 6)退職所得:退職によって受ける所得。
  • 7)山林所得:5年を超えて所有していた山林を伐採して売ったり、又は立木のまま売ったりした際の所得。
  • 8)譲渡所得:事業用の固定資産や家庭用の資産などを売った所得。
  • 9)一時所得:クイズの賞金や満期保険金などの所得。
  • 10)雑所得:年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、原稿料や印税、講演料などのように、他の9種類の所得のどれにも属さない所得。

弁護士の皆様に置かれては、この中で事業所得、給与所得、雑所得がメインとなると思われます。

給与所得は従業員として勤務している先から受ける給料・賞与

給与所得は、役員や従業員として勤務している先から受ける給料・賞与などの所得をいいます。所属事務所のボス個人や組合と雇用契約を締結している場合はその給与や賞与、弁護士法人の社員や、事業会社の社外役員に係る役員報酬、自治体主催の法律相談会などの報酬は給与所得に該当すると考えられます。

弁護士の基本的な収入は事業所得

所属事務所のボス個人や組合、弁護士法人と業務委託契約を締結している場合は、その業務委託報酬、依頼者から得た収入は基本的に事業所得に該当すると考えられます。たとえば、着手金、成功報酬、顧問料、相談料、国選弁護人報酬などが挙げられます。ここで重要になるのが、収入の計上時期を「いつ」にするのかという点です。

弁護士業務は、相談→受任→業務執行→請求→入金という流れになりますが、どの段階で収入として計上すればいいのでしょうか?基本的な考え方としては、「発生主義」となります。つまり、現金の受取りや支出に関係なく「売上が発生した時点」で計上するということになるわけです。

具体的には以下の通りになります。

  • ・相談料:相談を行った日。
  • ・着手金:着手した時点で発生するので、契約を締結した時点。
  • ・中間金:交渉から裁判に移行する場合など、中間金の受領について合意した条件の成就時または時期の到来時
  • ・成功報酬:役務の終了により成功報酬額が確定した時点。
  • ・顧問料:顧問料は継続性のある報酬なので、契約書に基づき、月割りであればその月の経過。

講演料、原稿料の取り扱いについて

所得税法においては、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」とされています。となると、講演料や原稿料などの扱いに困るところですが、印税収入が事業所得とされた採決事例(国税不服審判所平成15年3月11日裁決)において「講演料、出演料、印税、原稿料等の収入であっても、その講演等が弁護士の立場で行われたもの、あるいは、その内容が弁護士としての知識や経験等に基づくものであって、本来の弁護士の職務と直接の結び付きが認められるものは、所得税法上、事業所得以外の各種所得に係る収入金額又は総収入金額として特に明示されているものを除き、これに含まれると解するのが相当である」とされているように、弁護士業務に付随して行う講演や寄稿は、弁護士業の一環として行われているものと解され、事業所得に含めるものと考えられる可能性が高いと言えます。例えば、趣味に関する原稿を書いた際の執筆料などは雑所得に計上すべきであると言えます。

所得を分類して考えよう

ここまでみてきたように所得税は、収入の性質ごとに10種類に分類することが出来、所得ごとに収入や必要経費を計算することとされています。収入を全部まとめて捉えてしまうと、確定申告の際に混乱してしまうので、日ごろからしっかり分類しておくようにしましょう。

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