社外取締役になるには?社外取設置の義務化で弁護士にもチャンス到来か

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社外取締役設置が義務化し、社外取締役の人数は増加傾向にあるものの、社外取締役としての責務が増え続け、優秀な人材は複数の企業で兼任することで経営判断を委ねられる人材の確保が難しくなっています。
参考:掛け持ち平均4社、年俸2000万円も——社外取締役バブル、コーポレートガバナンス強化で需要急増

日本取締役協会は、社外取締役1人当たりの掛け持ちは「4社程度」を公表しているものの、適正な判断を下すには3社が限度という意見もあります。人材紹介会社も企業にマッチした人材の紹介に苦戦しており、優秀な人材であれば、表に出ていないだけで多くの企業が求めているのが現状です。

企業法務の案件を多くこなした経験のある先生の中には、社外取締役になることを考えたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、社外取締役が不足している背景や、社外取締役になるうえで知っておきたい情報をお伝えします。ガバナンス強化が期待されている昨今では、弁護士を求めている企業は多くいます。ぜひ参考にしていただければと思います。

目次

社外取締役が不足している背景

今、なぜ社外取締役が不足しているのでしょうか。今日に至るまでの流れを簡単にご説明します。

元々日本企業では社内の人が取締役になることが多かった

これまでの日本企業では、社内の人材が取締役についていました。終身雇用・年功序列の慣習のもとでは、取締役は出世レースの最後のゴールとしての位置付けでした。

また、企業が株主から集めたお金を適切に管理できているか、客観的な立場から確認する必要性も高まっています。これまではメインバンクがその役割を担っていましたが、現在では機関投資家の持株比率が高まっており、株主の代わりとして社外取締役が企業の経営をチェックすることが求められるようになりました。

改正会社法により、社外取締役の設置が義務付けられる

会社法改正前は社外取締役の設置は義務ではありませんでした。監査役会設置会社であり、かつ有価証券報告提出会社においては、社外取締役を設置するのに相当でない理由を株主総会において説明しなければならないだけでした。

 しかし会社法改正後は、社外取締役の設置が義務付けられるようになりました(会社法327条の2)。

とはいえ、これまで日本企業は積極的に社外取締役をおいていた訳ではありません。日経経済新聞『社外取締役、900社で計1000人不足 統治指針改定で』という記事もあるように、兼任者が増えることで実効性の低下が懸念されていたり、社外取締役を増やす仕組みが十分でなかったりと、社外取締役を設置するにあたって今後の課題は多いようです。

社外取締役になるには?求められている人材とは

ここでは、社外取締役の要件について触れたうえで、社外取締役になる人のバックグラウンドについて触れていきます。

社外取締役の要件とは

平成26年に会社法の一部を改正する法律等が公布され、以下のような現在要件と、過去10年間における過去要件が定められました。

 以下要件をざっくりと説明すると、当該会社の経営に影響を与える程度の関係者ではないことが要件となっており、文字通り『社外』の人間であることが求められています。

【現在要件】

1.当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等ではないこと。

2.当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

3.当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。いわゆる兄弟会社)の業務執行取締役等でないこと。

4.当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族でないこと。

 

【過去要件】

1.その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

2.その就任の前10年内のいずれかの時において、当該株式会社又はその子会社の取締役,会計参与又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、 当該取締役,会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

引用元:法務局『社外取締役及び社外監査役の要件等が改正されました(平成27年5月1日から)。』

弁護士も狙い目か?社外取締役の経歴とは

では、社外取締役に就任するのはどのようなバックグラウンドの人なのでしょうか。以下、経済産業省が2019年から2020年にかけて、東証一部、二部上場企業の全社外取締役を対象に実施したアンケートをご覧ください。

引用元:経済産業省『社外取締役の現状について』

 もっとも多いのは経営経験者(全会社の社外取締役の46.0%)ですが、続いて弁護士が全会社の社外取締役の11.8%となっています。企業法務に関心のある弁護士の方は、社外取締役になる道がこの先十分あり得るのではないでしょうか。

 参画後に弁護士が期待される役割については、『社外取締役として弁護士が求められる役割』にて後述します。

有識者の女性はチャンスが多い

経営陣の多様性を向上させるために、上場企業を中心に女性役員拡充の動きが見られます。以下、コーポレートガバナンス助言会社であるブロネッドが東証1部上場企業2092社を対象にした調査をご覧ください。

引用元:プロネッド『2018年 社外取締役・社外監査役白書』

 

引用元:プロネッド『2018年 社外取締役・社外監査役白書』

女性社外取締役の数も、女性社外取締役を選任している企業の数も右肩上がりであることがわかります。さらに、女性の場合は弁護士や大学教授の方が社外取締役になっているケースが多いようです。

経営層のダイバーシティを重視する流れや、社外取締役設置の義務化など、企業法務に関心のある女性弁護士の方にとっては追い風が吹いていると言えるでしょう。

社外取締役として弁護士が求められる役割

法律の専門家である弁護士が社外取締役として企業経営に参画する際は、以下のような役割が期待されます。

不祥事の予防

社外取締役としての弁護士に求められているポイントの1つが不祥事の予防です。既存の事業の適法性を検証できるのは、法律の専門知識を持っている弁護士です。内部統制や関し義務といった、取締役会の監視機能がうまく働くような環境を整備することが期待されます。

株式上場のサポート

上場をするためには、厳しい基準を満たさなければなりません。そのために、内部統制や法令遵守、適切な財務諸表の作成、セキュリティに関する統制など、超えるべきハードルがいくつもあります。このような環境を整備するのは、弁護士の助けがなければ極めて難しいと言えるでしょう。 

紛争による被害の最小化

紛争が発生した際に、被害を最小にする役割も期待されています。紛争を早期解決することで、風評被害を最小にし、信用の毀損を防ぎます。法律トラブルを解決できる弁護士の力があるからこそ、企業は安定して成長していけます。

その他の役割について

社外取締役は企業経営に対して外部の立場から助言をする仕事なので、普段は別の場所で仕事をしています。主な業務の1つが取締役会への参加で、経営判断に対して専門家の立場からアドバイスをします。社内で不正が起きたり、株主に損害を出したりしないよう、厳しく監視します。

また、経営者と株主の間に入り、双方の意見をそれぞれに説明する役割を担うこともあります。様々な利害関係者に挟まれて調整を行う弁護士の腕の見せ所といえるでしょう。

社外取締役1ヶ月辺りの業務時間と報酬

さて、気になる業務時間と報酬についてですが、弁護士の場合は76.1%1月あたり10時間未満を業務に費やしていると回答しました。

引用元:経済産業省『社外取締役の現状について』

 とはいえ20時間以上コミットメントされている方も20%程度いらっしゃるので、社外取締役になる話をもらった際は具体的に期待されている業務内容も確認しておきたいところです。 

 引用元:経済産業省『社外取締役の現状について』

報酬に関しては、年間600万〜800万円未満との回答が最多でした。大手企業になるほど、報酬額が跳ね上がるようです。例えば、朝日新聞『社外取締役、報酬は年平均663万円 兼務で高額報酬も』によると、日経平均株価に採用される225社の上場企業は役員報酬が特に高額になるようです。

高額な企業は

  • ・1位が日立製作所の3944万円
  • ・2位が岩谷産業3900万円
  • ・3位が住友不動産3225万円

ただ、大手企業の社外取締役になる弁護士は大手事務所の出身であることが多いように思います。もちろん大手企業以外にも社外取締役として弁護士を求めている企業は多いので、法務分野における実績や経験を適切に伝えることで社外取締役としての参画を目指したいところです。

社外取締役の案件を紹介している転職エージェント・サービス

普段から企業法務の案件を多く扱う方でなければ、「社外取締役になってくれ」と頼まれる機会はそんなにないかと思います。そんなときは転職エージェントに登録することで、社外取締役の非公開求人を紹介してもらえることがあります。

最後に、社外取締役にご興味のある方に向けていくつか転職エージェントをご紹介します。

NO-LIMIT

弁護士業界に特化した数少ない転職エージェントです。コーポレートガバナンスの強化が必要になってくる上場前のベンチャー企業やスタートアップの案件を紹介しています。

エグゼクティブ案件に特化している訳ではないものの、弁護士業界に特化しているため、業界知識を持っているアドバイザーのサポートを受けられます。

公式サイト:NO-LIMIT

コトラ

金融、IT、コンサル、製造業、経営層の案件に特化した人材紹介会社です。創業12年以上で登録者約23,000名、取引先企業約1,200社の実績があります。

公式サイト:KOTORA

ビズリーチ

国内最大級のハイクラス転職サイトです。企業やヘッドハンターからスカウトがきて直接連絡を取れる点が特徴です。公開求人は96,000件以上で、会員登録をすると詳細な内容を確認できます。

無料プランと有料プランがあり、無料プランでは一部のスカウトのみ閲覧と返信ができるようです。ハイクラス会員の料金は30日間コース 5,478円(税込)となっているようです。 

公式サイト:BIZREACH

リクルートエグゼクティブエージェント

経営層・エグゼクティブ層に特化した転職エージェント。経営層・エグゼクティブ層の紹介・決定実績は創業してから5,000名以上。人材業界大手の企業であるため、企業とのパイプがあります。幅広い企業にリーチできる点が大きなメリットと言えます。 

公式サイト:リクルートエグゼクティブエージェント

マイナビ顧問

上場企業役員、社内・社外取締役の案件が豊富な転職エージェントです。リクルート同様知名度があり、幅広い企業にリーチできます。企業に対して、フェーズに応じて顧問を紹介しているようなので、参画する企業のフェーズなどを想定している場合はそのことを伝えてみてもいいかもしれません。

公式サイト:マイナビ顧問

JAC Executive

経営層に特化した転職エージェント。当記事でご紹介したエージェントに比べると、外資系や海外企業の案件が豊富です。海外を志向している方におすすめ。

公式サイト:JAC Executive

まとめ

この記事では、主に弁護士の方に向けて、社外取締役になるには?というテーマで情報をお伝えしました。ガバナンス強化が期待され、社外取締役の設置が義務化された環境下において、法律の専門家である弁護士が担う役割は重要である上に代替の効きにくいものでしょう。企業法務を扱っている弁護士の方は、この機会に社外取締役として企業経営に参画されるのもいいかもしれません。

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