住宅ローンと不動産投資ローンの違い
住宅ローンと不動産投資ローンはともに、不動産に関する融資ですが、その目的は、自分が住むための不動産なのか、もしくは、他人に貸して利益を得ることを目的として購入する不動産なのかという、目的の違いです。
この大前提の違いがあるため、二者は全く異なる特徴を持っています。
返済原資
住宅ローンでは基本的には、借主の毎月の給与収入や事業収入、つまり、返済原資は「本業の収入」です。
一方で、不動産投資ローンでは、主な返済原資は「入居者からの家賃」となります。この点が大きく異なります。
融資の審査
住宅ローンの返済原資は、個人の収入でした。
よって、金融機関が融資の審査をする際、年齢、年収、勤務先の規模や契約形態、勤続年数、返済能力、信用情報といった「個人の属性」を元に返済能力の有無や融資額を決定します。
一方、不動産逃投資ローンの場合でも、もちろん、個人の属性は大きな審査項目ですが、それに加えて、返済原資が家賃収入であるため、「物件の収益性・事業性」なども審査されます。
金利
一般的に、住宅ローンよりも、不動産投資ローンの金利の方が高くなります。
■フラット35と賃貸住宅融資(35年)金利推移
(住宅金融支援機構より作成)
上記グラフの通り、住宅金融支援機構のフラット35と賃貸住宅融資の推移を見ても、かなりの差があるのが分かります。
どうして、このように差があるのでしょうか?住宅ローンは、借主の毎月の収入が返済原資となるのに比べて、不動産投資ローンは入居者からの家賃収入が返済原資となります。
もし、入居者に家賃を滞納される、空室が続いてしまうなどの理由で家賃収入が減ると金融機関は滞納されるリスクが高くなります。
また、住宅ローンは、万が一、返済が出来なくなった場合、住む家を失ってしまいますが、不動産投資ローンは、もしも、貸し倒れとなった場合でも、生活基盤を失う恐れがないという、危機感の違いもあると言えます。
このリスクの違いが金利の差となっています。つまり、不動産投資ローンは、住宅ローンに比べてリスクが高いため金利も高めに設定されているのです。
どちらを先に組むべきなのか
ここまで住宅ローンと不動産投資ローンの違いを見て来ました。それでは、住宅ローンと不動産投資ローンを同時に組むことはできないのでしょうか?
結論から申し上げると、併用することも可能です。しかし、先に組んだ方のローンが、次に組むローンに影響を与えることは確かなので、審査に通過できない場合や、融資限度額が大きく減額されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
それでは、どちらを先行で組むべきなのでしょうか?
不動産投資ローン先行のメリットとデメリット
まずは、不動産投資ローンを先に組んだ場合です。多くの金融機関は不動産投資で得た収益も年収に含めることが出来るので、あとで住宅ローンを組みやすくなる点がメリットと言えます。
また、一般的に、不動産投資ローンの方が住宅ローンよりも審査が厳しくなるのですが、その際に、もし、先に組んだ住宅ローンの残債が担保評価額より低い状態では、不動産投資用ローンの審査に通る可能性は低くなってしまいます。先に不動産投資ローンを組んでおけば、避けることが出来ます。
しかし、これらは不動産投資が事業としてうまく回っているのが大前提となります。
この点は、不動産投資ローンを先に組むデメリットにもなりますが、後のち、マイホームと思いながら、不動産投資を先に始めたが、うまくいかなかったとなると、借入れ額も縮小し、マイホームの自由度も下がってしまう可能性もでてきます。
住宅ローン先行のメリットとデメリット
住宅ローンを先に組むメリットは、自分の住まいをより理想形に近づけることが出来る点です。
不動産投資ローンを先に組んでいた場合は、もし、その不動産投資事業がうまく行ってなかったら、融資金額が減ってしまう可能性があります。
家族の今後の生活のために、理想のエリアで理想の暮らしを送りたいと思っている場合は、住宅ローンを先に組んだ方が、自由度が上がると言えます。
しかし、住宅ローンを先に組んだ場合、いざ、不動産投資をしようとなった場合、自宅から収益が上がるわけではないので、単純な既存借入と見なされやすくなります。
借入れ可能額が縮小するどころか、借入れが出来ない場合もあるので注意が必要です。
マイホームが先か不動産投資が先か…
答えは人それぞれです。いつか不動産投資にチャレンジしてみたいと思っている方は、住宅ローンを組む前に、自身の属性からどの程度借りることが出来るのかをしっかりと検討する必要があります。