共有名義の物件の問題点や対応などについて解説

実家などの不動産を法定相続分に応じて相続した、自宅を夫婦で資金を出し合い共同で購入した、などにより不動産が共有名義になったということは、よくある話です。

共有者の一人が共有名義の不動産を売却したいと言い出すこともありますし、自分の共有持分を売却して現金を手に入れたいと思うこともあるでしょう。

共有持分だけを売却することは理論上可能ですが、一般的な不動産売買で、共有名義の住宅を購入したがる人はそれほど多くありません。

この記事では、共有名義の不動産に関する問題点と、その対策などについて解説していきます。

目次

そもそも共有状態とは?概要をかんたんに解説

共有とは、一つの不動産の所有権を複数の人が共同で所有していることで、不動産の場合、登記事項証明書に「共有者 持分何分の何 氏名」と表示されます。

共有状態が起こる原因

被相続人死亡後、相続登記をせず放置

本来ならば被相続人死亡後すぐに相続登記をすべきであったのに、うちは代々長男がすべて相続することになっているから大丈夫などと、相続登記をしないまま何十年も放置されていたなんてこともあります。

不動産を夫婦で共同して購入

夫婦で購入資金を出し合い住宅を購入した場合、出資した金額に応じた持ち分割合で登記することが増えています。

土地を兄弟で資金を出し合って購入

両親が暮らすための土地を兄弟で資金を出し合って購入することもあります。

遺産相続時に、法定相続分に従って相続

遺言に、子らで平等に分けなさいと記載されていたこともありますし、とりあえず落ち着くまで法定相続分に応じて登記をしておくこともあります。

共有物の処分等の意思決定に必要な同意について

単独の名義人であれば単独で土地の管理や売買などができますが、共有物の場合には、各共有者の同意を得なければ行えない行為があります。

同意が必要・不要については、以下の3つに分類されます。

1.共有物の変更行為

売買契約、抵当権設置、不動産の改築や取り壊しなどの変更行為をするときは共有者全員の同意が必要です。

2.共有物の管理行為

賃貸借契約など、変更には該当しない利用・改良などの管理行為をするときは、持ち分価格の過半数の同意が必要です。

3.共有物の保存行為

不動産の修繕や掃除などのメンテナンスといった保存行為をするときは、共有者の同意は不要で、各共有者が単独で行えます。

共有名義物件のメリット・デメリット

不動産を共有にするメリットとデメリットにはどのようなものがあるでしょう。

共有持分にするメリット2つ

公平性が保たれ、分配で揉めにくい

最大のメリットは、公平性です。持ち分が同じ人しかいない場合に共有持分の割合を同じにすれば、権利関係は平等になります。

相続財産が不動産しかない場合には、共有持分で相続するのが一番公平になるので、遺産分割協議の話し合いが容易になります。

不動産が収益物件で、賃料収入を得るような場合には、持分割合に応じた賃料を受け取ることができるので、公平性が保たれ、分配でもめることもありません。

税制面で得する場合も

居住用財産を売ったときに、売却益から最高3000万円を差し引くことができるという特例があります。

3人で共有名義にした場合、それぞれが利用できるので、最高9000万円までに利益に対して税金がかからなくなります。

夫婦が共有名義で登記した場合、住宅ローン控除の適用を受けられます。

共有持分にするデメリット5つ

処分や管理が自由にできない

実際に居住している人あるいは代表して管理している人が、自分だけで全てを決めることはできません。

処分行為に該当する売却や贈与などを行う場合には共有者全員の同意が必要です。

管理行為に該当する改良や賃貸借契約の締結などを行う場合には、過半数の持分を所有する共有者の同意が必要です。

独り占めされる危険性

共有名義の不動産に共有者の1人が居住する場合、持分割合に関係なく、その不動産全体を利用できます。

勝手に住み始めて独り占めしても、他の共有者はそれを阻止できません。

持ち分に応じた固定資産税等の負担

固定資産税や都市計画税は、持分割合に応じて負担する必要があります。原則、代表者に納付書が届きますが、代表者だけが納付義務を負うわけではありません。

しかし、代表者にしか届かないため、代表者が他の共有者の分も代わりに支払うことが多く、そのことが原因でトラブルになるケースもあります。

持ち分のみの処分の困難さ

共有者の1人が共有不動産を売却したいと思ったとき、共有者全員の合意が得られれば売却が可能ですが、当該不動産に居住している共有者がいた場合には、売却に同意してもらうのは困難です。

相続による法定相続人が孫やひ孫の代にまでなると、共有者全員の所在を確認したときに、所在不明者がいて連絡がとれない可能性もあります。

自分の持分のみを売却することもできますが、居住者がいる不動産の持分だけを売却することは事実上困難です。

見知らぬ第三者が持ち分を取得する可能性

もしも共有者の1人が共有持分を売却した場合、見ず知らずの第三者が買い取り、共有者になることも考えられます。

以上から、不動産を共有持分にすることは、メリットよりデメリットの方が大きいといえます。

共有名義物件の問題点

不動産を共有することによって、さまざまな問題が発生します。

管理・占有・税金負担

共有状態のまま放置してある場合、誰がその不動産を管理・占有するのか、勝手に占有している共有者に対して使用料を請求できるのか、固定資産税などの負担をどうするのか、などの諸問題が生じます。

さらなる細分化

最初は2人~3人くらいでの共有だったものが、共有者の死亡により、どんどん共有持分が細分化されていってしまいます。

遺産分割を行うことが困難になる

すべての共有者の居場所が判明すればまだ遺産分割協議に応じてくれる可能性もありますが、居場所がわからない共有者がいる場合や、共有持分を購入した第三者がいる場合には、遺産分割協議をすることが非常に困難になります。

共有名義になっている不動産を相続した場合にすべきこと

自分が相続する時にはすでに共有持分であることもあります。その場合、どのようにしたらよいか、お伝えします。

死亡した人の持ち分を相続

すでに共有状態なので、これ以上細分化されないように、相続人間で協議し、単独で相続できれば単独で相続しましょう。

相続登記をする

なるべく早めに相続登記をしましょう。万が一相続登記をする前にまた相続が発生してしまうと、より複雑になってしまいます。

共有状態の解消―これ以上細分化しないために―

最初は子ら2名で法定相続分どおりの相続で各2分の1の持分であったものが、片方の子2名が相続すると、2分の1と4分の1、4分の1となり、権利関係が複雑になっていきます。

自分から見て3世代・4世代遡って相続調査をしなければならないことがあります。

その場合、相続が始まったのが昭和22年より前(家督相続)なのか、昭和23年~55年の間なのか、昭和56年1月以降(現行)なのかにより、相続人の範囲が異なります。万が一昭和23年~昭和55年の間に被相続人が死亡していた場合には、代襲相続が無限に続きますので、相続調査をするだけで大変なことになります。

権利関係が複雑になる前に、共有状態を解消したほうがよいでしょう。

共有状態の解消方法の説明をします。

持ち分を買い取るあるいは買い取ってもらう

共有持分を買い取ることで、1人の単独所有とすることができます。ただし、共有持分の売買には住宅ローンなどの融資を利用することができないので、買い取る方は、現金を用意する必要があります。

現在の価値に合わせた買取価格が購入当時の価格に比べて利益が生じた価格である場合、譲渡所得税の課税対象となってしまいます。

土地は分筆してしまう

共有不動産が土地である場合には、持分に応じて分筆して、単独所有に変えることも一つの方法ですが、その場合には新たに境界を確定する必要があります。

第三者へ売却する(協力が必須)

売却できるタイミングを見計らって、共有者全員で協力して売却し、売却益を持分で分配する方法もあります。

これが一番公平な方法と言えるでしょう。

共有持分の放棄

共有持分は放棄することができます。

持分放棄で気をつけなければならないことは、放棄は無償で所有権を譲り渡す行為なので贈与と同じと考えます。

そのため所有権を譲り受けた人に贈与税がかかり、不動産の価値が高いと贈与税の金額も高くなります。

共有持分の解消に向けた話し合い

共有者全員で話し合いをします。自分の持分を他の共有者に買い取ってもらったり、あるいは、共有者全員が一丸となって第三者に売却したりします。

共有物分割協議

どうしても協議が整わないときには、共有物分割協議をします。共有物分割協議を行う旨、内容証明郵便で共有者全員に送付します。

共有者全員が話し合いに応じてくれなくても、申し入れをしたという証拠が残ります。

協議による分割には、3つの方法があります。

  • 1.現物分割
  • 2.換価分割
  • 3.代償分割

現物分割とは、共有する1筆の土地を持分割合に応じて分筆し、それぞれ単独で取得する方法です。

土地が広ければ、分筆しても十分利用価値がありますが、分筆によって利用価値がない場合には、現物分割のメリットはありません。

換価分割とは、共有する1筆の土地を第三者に売却し、持分割合に応じて売却代金を分けるという方法です。

代償分割とは、共有する1筆の土地を共有者のうちの1人が単独で取得する代わりに、他の共有者に持分割合に応じて相応の金銭を支払う方法です。

他の共有者に一括で支払う現金を持っていれば可能ですが、現実的には難しいでしょう。

共有物分割訴訟

共有物分割協議をしてもどうしても協議が整わない場合には、裁判所に共有物分割請求を訴えることができます(民法258条1項)。

裁判所で1~3のどれにするか決めますが、裁判による分割については、原則的には1.現物分割の方法をとります(民法258条2項)。

しかし、分割できない不動産である場合や、分割によって著しく価値が下がってしまう場合には、代償分割を検討し、最終的には裁判所が「競売」を命じます。

ただ、競売による売却の場合、売却金額は任意売却の金額より大抵低くなります。そのため、裁判内で和解をして任意売却をすることをお勧めします。

まとめ

相続が発生し、相続人が複数いる場合には分割割合が確定するまでは一時的に相続人全員の共有状態になります。

共有物分割協議で話がまとまれば共有状態は解消されますが、何もせずに放置しておくと共有状態のままになってしまいます。

共有状態をそのままにしておくと様々な問題が生じる可能性があります。

当初から不動産の共有はできるだけ避けること、共有状態の不動産の相続は単独で引き継ぐこと、共有状態はなるべく早く解消することをお勧めします。

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この記事を書いた人

日本弁護士連合会に登録している約4万2000人(2020年10月現在)の弁護士を中心に、法律事務所職員、司法修習生へ、法律事務所の経営や集客、仕事術に関するお役立ち情報と、弁護士の資産形成、業界情報などについての情報発信を行っています。

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