自由と正義:2020年7月号
弁護士会:大阪弁護士会
登録番号:2万番台
処分の内容:戒告
処分の理由の要旨:
(1) 被懲戒者は、2014年2月13日に夫婦関係調整調停事件の依頼者Aが死亡した後、Aの相続人として、妻であり上記事件の相手方であった懲戒請求者B、子である懲戒請求者C及び懲戒請求者Dがいることが明らかであるにもかかわらず、Aから預かっていたAの自宅の鍵を同年3月17日に懲戒請求者らに返還するまでAの自宅を占有し、その間に、懲戒請求者らから承諾を得ることなく540万円を超える現金等をAの自宅から搬出し、また、Aから預かっていた現金合計1738万円について、同年4月初旬まで返還しなかった。
(2) 被懲戒者は、懲戒請求者Bの了解を得て行ったAの葬儀について、懲戒請求者らに事実上葬儀等への参列を辞退するよう求め、その結果Aとの別れの機会を失わせた。また、被懲戒者は、被懲戒者が管理していたAの現金から支出した葬儀関連費について、2014年5月22日に懲戒請求者らに葬儀費用等の明細及び領収書を交付したものの、懲戒請求者らから更なる報告と清算を求められたにもかかわらず、2015年3月17日に懲戒請求者らから未返却物及び現金の返還やAの葬儀の状況の説明、葬儀費用の清算等を求めて申立てられた紛議調停手続において、一部の説明しか行わなかった。
(3) 被懲戒者は、上記(2)の紛議調停手続において、一定の金品の返還の意向を示したものの、その余の金品の返還については争い、上記手続では全く返還せず、返還不能であった一部を除いて2017年2月7日に懲戒請求者らから提起された損害賠償請求訴訟の係属中に清算、返金するまで長期にわたって返還等しなかった。
(4) 被懲戒者は、生前Aから預かった上記(1)の1738万円14営業日以上にわたり事務所の金庫で保管し、預かり金口座で保管しなかった。
(5) 被懲戒者の上記(2)の行為は弁護士職務基本規定第44条等に、上記(3)の行為は同規定第45条等に、上記(4)の行為は預かり金等の取扱いに関する規定第4条第2項及び所属弁護士会の会員の業務上預かり金の保管方法等に関する規定第4条第2項に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
処分が効力を生じた日:2019年12月