自由と正義:2020年9月号
弁護士会:福井弁護士会
登録番号:4万番台
処分の内容:戒告
処分の理由の要旨:
被懲戒者は、交通事故案件で後遺障害認定が問題となりそうな事案について、まずは行政書士Aを紹介することとしており、Aにおいて被害者請求を行って後遺障害認定を受けた後に、被懲戒者が受任して加害者側との示談交渉や訴訟を行うこととしていたところ、2015年11月18日の懲戒請求者との交通事故事件の初回相談において、本件が相当難解な事案であり、懲戒請求者がAに自賠責保険金の被害者請求手続を委任した場合、かかる手続後の加害者への損害賠償請求を被懲戒者が受任する可能性が極めて高く、その際には弁護士費用特約保険を利用して一定の報酬が確実に得られることになるという状況の下、非弁行為を行うと疑うに足りる相当な理由のあるAを同席させた上で、法律相談を行いながら懲戒請求者に対しAに上記被害者請求手続の委任をすることを促し、その後、懲戒請求者とAが被害者請求手続につき委任契約を締結した。また、被懲戒者は、懲戒請求者が弁護士費用特約の利用を自ら申し出ていたことから、懲戒請求者の意向を丁寧に確認し、自己負担を生じさせないで行う手続方法の有無やその内容、それと比較して、自己負担が発生する手続方法の利点等の具体的内容を、懲戒請求者が十分理解できるように説明し、費用を自己負担する手続方法で進める場合には、懲戒請求者がその手続方法で進めたいと真に欲するものであるかを慎重に確認する必要があったにもかかわらず、これを行わず、それらの結果として、懲戒請求者が真に認容していなかった弁護士費用特約では担保されない行政書士費用22万9500円を自己負担することになった。
被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規定第5条、第6条及び第11条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
処分が効力を生じた日:2020年2月