懲戒情報|守秘義務|2021年8月号(16)

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自由と正義:2021年8月号

弁護士会:第二東京弁護士会

弁護士名:佐藤光則 

登録番号:20599 

裁決の内容:

  1. 審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。
  2. 審査請求人を懲戒しない。

裁決の理由の要旨

  1. 本件は、交通事故による損害賠償請求事件の加害者側であった審査請求人が、被害者及びその治療に当たった懲戒請求者に対して送付した文書(以下「本件文書」という。)において、秘密保持義務違反、営業妨害、権限踰越等があるとの理由で懲戒請求者された事案であるところ、第二東京弁護士会(以下「原弁護士会」という。)は、これらのうち、秘密義務違反について、弁護士法第23条及び弁護士職務基本規程第23条に規定する「秘密」とは、一般人に知られていない事実であって、本人から見て特に秘匿しておきたいと考える性質の時効に限らず、一般人の立場から見て秘匿しておきたいと考える性質を持つ事項と解した上で、本件文書に記載されている懲戒請求者についての別件訴訟の係属裁判所、係属部、裁判官、(反訴も含む)事件番号、原告被告の氏名及び架空通院、不正請求が問題となった事実はいずれも「秘密」に該当するものであり、懲戒請求者について架空通院、不正請求が問題となって訴訟が係属している事実まで被害者に説明する必要性があるとまでいうのは困難であるとして、本件文書を被害者に送付したことは守秘義務遠反に当たると認定して、審査請求人を戒告の処分に付した。
  2. 日本弁護士連合会懲戒委員会が審査した結果、本件文書に記載されている別件訴 訟の係属裁判所、係属部、裁判官、事件番号、原告被告の氏名及び架空通院、不正請求が問題となったという事実はいずれも懲戒請求者についての「秘密」に該当し、また、弁護士職務基本規程第23条は「正当な理由」がある場合には秘密保持義務が解除される旨規定するところ、秘密保持義務が弁護士の職務上の義務として最も基本的かつ重要な義務であることからすれば、「正当な理由」の存否は安易に解釈されてはならず、審査請求人が本件文書に前記内容の記載をしたことは直ちに「正当な理由」があったと認めることはできない。
  3. しかしながら、本件においては、懲戒請求者の施術については一括対応を行わないという方針が保険会社によって決定され、被害者に対して伝えられていたのであるから、審査請求人は、被害者に対して一括対応できないことの理由を示す必要があり、そのためには、懲戒請求者について架空通院、不正請求を内容とする訴訟が具体的に存在することを指摘せざるを得なかったとの事情があり、かかる事情を総合的に考慮すれば、審査請求人が本件文書に前記内容の記載をしたことは、弁護士としての品位を失うべき非行とまでいうことはできない。
  4. よって、審査請求人を戒告に付した原弁護士会の処分を取り消し、審査請求人を懲戒しないこととする。
  5. なお、審査請求人が本件文書に前記内容の記載をしたことに「正当な理由」がない以上は、弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとして、戒告処分を相当とする意見が一定数あったことを付言する。

 

裁決が効力を生じた日:2021年6月

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