自由と正義:2022年11月号
弁護士会:第一東京弁護士会
弁護士名:奥野剛史
登録番号:39944
法律事務所名:奥野法律事務所
処分の内容:業務停止1月
処分の理由の要旨:
(1)被懲戒者は、配偶者との離婚トラブルに関連して、自宅マンションのエントランス付近で、義理の父母であった懲戒請求者らを敷地内から退去させようと暴行し、傷害を負わせたとして懲戒請求されたところ、原弁護士会は、手続期間中に本件に係る刑事事件の判決が確定せず、防犯カメラの映像等の客観的証拠を調査できなかったため、被懲戒者の自認の範囲でのみ暴行を認め、傷害は暴行から生じたと断定できないとし、他方、正当防衛の成立は否定して、被懲戒者を戒告処分(以下「本件処分」という。)とした。
(2)本件に関し、被懲戒者は、暴行罪で罰金刑の有罪判決の言渡しを受け(本件処分発効後に確定。)、また、懲戒請求者らが被懲戒者に対して損害賠償を求めた民事訴訟では、異議申出後に一部認容の判決が言い渡され、被懲戒者は控訴したが棄却された(被懲戒者が上告中。)。いずれの判決も、防犯カメラ映像等に基づき、原弁護士会懲戒委員会の認定を超える態様及び程度の暴行を認め、正当防衛を否定し、民事訴訟では傷害の結果との因果関係も認めている。
(3)防犯カメラの映像、刑事事件及び民事事件の訴訟記録及び当委員会の審査期日における被懲戒者の陳述等によれば、被懲戒者は、懲戒請求者X1に対し、肩付近を手で押して床に転倒させ、足をつかんで引きずるなどの暴行を加え、全治約2週間を要する頭部打撲血腫、右肩打撲、右膝打撲、右側胸部打撲、左臀部打撲、外傷性頚部症候群の傷害を負わせ、また、懲戒請求者X2に対しては、肩付近を手で押し、胸ぐら及び袖口辺りをつかんで床に投げ倒し、押したり突いたりした上、転倒した懲戒請求者X2に馬乗りとなったり、腕をつかんで引きずったりしたほか、脇腹を手拳で殴打するなどの暴行を加え、全治約10日間を要する顏面打撲、左肩打撲、左側胸部打撲、右肘擦過傷、口腔内挫創、全治3か月を要する左肋骨骨折の傷害を負わせたことが認められる。
(4)以上の被懲戒者の行為は、自己の欲求を暴力によって実現しようとしたものであって、職務上であれ私生活上であれ、到底許容されない。しかも、被懲戒者の暴行は執拗で、その程度も態様も軽微とは言えず、懲戒請求者らの年齢等に照らせば、身体への危険は高かった。また、被懲戒者は、防犯カメラの映像等から推認できる事実に関してもこれを否定するなど、自己の行為に対して真摯に向き合っているとは言い難い。
(5)以上に照らせば、本件処分は軽きに過ぎるというべきであり、被懲戒者を戒告とする本件処分を変更し、業務停止1月とすることが相当と判断する。
処分が効力を生じた日:2022年9月