法律家を育てる実践的科目②〜エクスターンシップ編〜【法科大学院科目解説】

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法科大学院(ロースクール)では、学生が法律実務の経験を積むための「エクスターンシップ」という特殊な科目が提供されています。この科目は、従来の講義形式とは異なり、学生が学外で実務経験を積むことを目的としています。

本記事では、エクスターンシップの特徴、実施内容、そしてそれが学生にどのような利点をもたらすかを詳細に解説します。法律実務の最前線で学び、将来のキャリアにつながる貴重な経験を得るチャンスです。

目次

法科大学院とは?

皆さんは、法科大学院(ロースクール)がどんなところかご存知でしょうか?

前回の記事でご紹介したように、現在の法科大学院には、

  1. 司法試験の受験資格を獲得する
  2. 前期修習を行う

という2つの意義があるといえます。

前回の記事に引き続いて、本記事では、このような法科大学院の2つ目の側面に着目して、修習同様に実務的な経験を積むことができる「エクスターンシップ」という科目を紹介したいと思います。

法科大学院への進学を検討されている方々や、通常の法学部と法科大学院ではどう違うのかに興味がある方々は、ぜひこの記事を読んでいただけると幸いです。

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「エクスターンシップ」とは?

多くの法科大学院では、2年次頃に「エクスターンシップ」という科目があります。

一般的によく聞く言葉として「インターンシップ」がありますが、言葉自体の意味としては、「エクスターンシップ」はまさしくその逆であり、企業等から見ると学生を内部に受け入れるのがインターンシップであるように、法科大学院から見ると学生を外部に送り込んで経験を積ませるのがエクスターンシップであると考えることができます。

つまり、「エクスターンシップ」という科目は、通常の講義科目とは異なり、法科大学院の外で、学生がより法律実務的な経験を積むことで、学びを深めることを目的としています。

以下では、その特徴や実際の内容を具体的なイメージがつかめるように紹介していきたいと思います。

実施時期・実施期間

まず、実施時期は基本的に夏季長期休暇中又は冬季長期休暇中であることが多いです。

法科大学院の外で実施するという性質上、授業期間内はなかなか行うことができないので、まとまった休暇期間中に連続的に実施することが多いです。従って、地方出身の学生であれば、地元の受け入れ先を志望して帰省中にエクスターンシップに参加することもできます。

受け入れ先にもよりますが、実施期間は1〜2週間ほどにわたって行われることが多いです。また、土日は除いて、平日の通常の業務時間である9:00〜17:00頃に行うのが一般的です。

受け入れ先

次に、受け入れ先としては、概ね受け入れ人数が多い順に以下のようなものがあります。(※年度や法科大学院によって対象・内容が大きく異なる可能性があります。)

  • 弁護士事務所
  • 民間企業の法務部
  • 官公庁
  • NPO法人などの組織・団体
  • その他自己開拓先

①弁護士事務所や②民間企業の法務部は、まさしく法律実務の最前線であり、法律事務所に関しては、取扱分野として刑事弁護や一般民事を扱う公設事務所から渉外系まで、多数の選択肢の中から自分の興味関心に合ったものを選ぶことができます。企業法務部であれば、いくつかの大企業が候補となります。

③官公庁は、人事院や総務省、法務省、財務省、文科省などなど、あらゆる省庁で主として政策実務の最前線を経験することができます。

④は、候補は多くありませんが、自由人権協会など法曹とも関わりの深い組織・団体が対象となり得ます。

⑤は、学生が自ら①〜④に類似する実務経験を積める組織・団体に直接交渉して受け入れ許可をもらえれば法科大学院の承認の上、単位認定してもらえる場合があります。ただし、法曹資格を有する人物の指導・監督などが要件になる場合が多いです。

各受け入れ先ごとに1〜3名程度の枠があり、定員を超えた場合は第2希望、第3希望の受け入れ先を訪問することになります。

実施内容(①弁護士事務所の事例)

ここでは、多くの方が訪問することになるであろう①の弁護士事務所でのエクスターンシップについてご説明していきます。特徴的なのは、何より法律実務の現場をその目で見て体験することができる点です。

主に担当者になって下さった弁護士の先生に付き添う形で、その先生の1〜2週間のスケジュールに同行し、様々な職務内容を見学することができます。

例えば、街弁系の事務所であれば、法律相談や訴訟、事務所内での執務など、弁護士の基本的な業務を一通り体験することができます。場合によっては、出張法律相談や弁護団会議、現地調査など、受け入れ先の法律事務所を飛び出して活躍する弁護士の方の姿を間近で見るという、少しレアな体験をすることができるかもしれません。

このような経験は、もちろん修習中にも体験する機会があると思いますが、日頃は参考書や問題集と格闘するだけの法科大学院生にとっては、法律が現実に生きた世界で使われている場面を目にすることで知識の理解がより定着しやすくなるとともに、法律がどのようにして市民の役に立つかを早いうちに知っておくことで、勉強のモチベーションを高めることもできるでしょう。

また、法律知識それ自体に限らず、例えば法的紛争の背景事実を教えていただいたりして、社会で今どんなことが問題になっていているかを実務を通じて学ぶこともできるでしょう。

その他、法曹という職業にまつわる全般的な魅力や悩みなどを、現役の弁護士の方々などから直接伺い知ることもできると思います。

受け入れ終了後

受け入れ終了後は、簡単なレポートを作成し、自らが経験したことや発見したことをまとめます。これによって、法科大学院側から単位認定をしてもらうことができます。

なお、エクスターンシップについて報酬は発生しません。

また、受け入れ期間中に知り合った弁護士の先生方やその他の社会人の方々との連絡先を交換しておけば、貴重な人脈ともなりますし、もしかすると将来の就職活動に繋がるかもしれません。

「エクスターンシップ」の魅力

これまで見たところからエクスターンシップの魅力をまとめると、以下のようになります。

  1. 法律実務の現場を体験して法律知識や社会に対する関心を深めることができる
  2. 法律が社会に役立つことを実感して勉強のモチベーションを高めることができる
  3. 法律実務家の働き方、やりがい、悩みなどを間近で知る機会が得られる
  4. 将来のキャリアにつながる人脈を得ることができる

もちろん、エクスターンシップ実施後に法科大学院生に感想を聞いてみると、「体験してみると思っていたのと違った」とか「あまりに忙しそうで自分に向いていないと感じた」とか、ネガティブな意見もないわけではありません。

しかし、それはむしろ、早いうちから進路を決めるヒントを得られたと考えることもできるでしょう。

近年は在学中受験も始まり、サマークラークなどの就職活動も早期化しており、2年次の休暇期間中は忙しい方もいるかもしれませんが、単位をもらいながら職場体験ができる貴重な機会なので、履修してみることをおすすめします。

まとめ

以上、法科大学院科目「エクスターンシップ」についてご紹介してきました。

エクスターンシップに興味を持った人は、法科大学院に進学してみてはいかがでしょうか。

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