今年も「企業が選ぶ弁護士ランキング」の季節がやってきました!
このランキングは、日経新聞が独自に選定した『企業法務に携わっている企業や弁護士にアンケートを通じて回答してもらう』ことで、その年に活躍した弁護士を発表するものです。
企業法務の中でも、
- 企業法務全般(会社法)
- M&A・企業再編
- 危機管理・不正対応
- ビジネスと人権
- 中国法務
の5分野について、ランキング形式で発表しています。そこで、本記事では、同ランキングで上位にランクインした弁護士の方々をさらに詳しく調査していきたいと思います。
以下では、企業の法務担当者の投票による「企業が選ぶ弁護士ランキング」を対象とし、弁護士の票も合わせた「総合ランキング」については扱わず、また、データはいずれも執筆時点(2023年12月執筆)のものであることをご理解、ご了承ください。
企業法務全般(会社法)
まず、「企業法務全般(会社法)」のトップ3の弁護士の方々です。
順位 | 名前 | 所属 | 役職 | 学歴 | 資格 |
1 | 太田 洋 | 西村あさひ | パートナー | 東京大学、ハーバード大学 | 弁護士、ニューヨーク州弁護士 |
2 | 中村 直人 | (中村・角田・松本法律事務所→)中村法律事務所 | 代表 | 一橋大学 | 弁護士 |
3 | 倉橋 雄作 | (中村・角田・松本法律事務所→)倉橋法律事務所 | 代表 | 東京大学、東大ロー、オックスフォード大学 | 弁護士 |
太田 洋弁護士
大手事務所のパートナーとして数々の事件を担当され、敵対的買収やアクティビスト対応などの領域で専門性を発揮されています。
東京大学、京都大学、一橋大学など多数の大学で講師・教授を歴任しつつ、著作や論文なども多数執筆するなど、研究熱心な先生です。例えば『新株予約権ハンドブック〔第5版〕』(商事法務,2022年)などの著名な作品で編集代表を担当されています。 また、経済産業省の研究会でも度々委員を務められており社会貢献活動にも積極的です。
中村 直人弁護士
かの有名な『二ッポン放送 vs ライブドア事件』でニッポン放送側の代理人を務められた方です。その他にも、企業不祥事の際の第三者委員会としても多く活躍され、最近ではスルガ銀行の不正融資問題や日大の違法薬物問題でも委員を務められています。
最近はパートナーを務められていた事務所から独立され、新たなステップに進まれています。
倉橋 雄作弁護士
前述の中村弁護士の事務所の出身です。その直々の愛弟子として、ここ数年は毎年日経の弁護士ランキングにランクインされています。多くの企業で社外取締役・社外監査役を務められ、現在は、東大ローの教員も務められています。
中村弁護士と同様に、最近独立され、ご自身の事務所を立ち上げられました。
M&A・企業再編
次に、「M&A・企業再編」のトップ3の弁護士の方々です。
順位 | 名前 | 所属 | 役職 | 学歴 | 資格 |
1 | 太田 洋 | 西村あさひ | パートナー | 東京大学、ハーバード大学 | 弁護士、ニューヨーク州弁護士 |
2 | 金子 圭子 | アンダーソン・毛利・友常 | パートナー | 東京大学 | 弁護士 |
3 | 柳田 一宏 | 柳田国際 | 代表パートナー | 明治大学、早稲田ロー、ハーバード大学 | 弁護士、ニューヨーク州弁護士 |
太田 洋弁護士
上記の「企業法務全般(会社法)」をご参考ください。
金子 圭子弁護士
大学卒業後から商社に6年ほど勤務されてから、その後弁護士としてアンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所され、現在では同事務所のパートナーに就任されています。
過去には東大ローの授業も担当され、現在は、ユニクロ及びファストリテーリング、朝日新聞社、ダイフクなどの大企業で社外監査役や社外取締役等を兼任されています。
柳田 一宏弁護士
M&Aや独禁法の領域で有名な柳田国際法律事務所の創業者である柳田幸男弁護士のご子息であり、過去には西村あさひ法律事務所にも勤務されていましたが、現在では柳田国際法律事務所にて代表パートナーを務められています。
柳田幸男弁護士も長く同ランキングにランクインされていましたが、最近では柳田一宏弁護士が例年ランクインするようになっています。
危機管理・不正対応
続いては、「危機管理・不正対応」のトップ3の弁護士の方々です。
順位 | 名前 | 所属 | 役職 | 学歴 | 資格 |
1 | 木目田 裕 | 西村あさひ | パートナー | 東京大学 | 弁護士 |
2 | 深水 大輔 | 長島・大野・常松 | パートナー | 東京都立大学、東大ロー、キングスカレッジロンドン | 弁護士、公認不正検査士 |
3 | 國廣 正 | 国広総合 | パートナー | 東京大学 | 弁護士 |
3 | 平尾 覚 | 西村あさひ | パートナー | 東京大学、イリノイ大学 | 弁護士、公認不正検査士 |
木目田 裕弁護士
司法試験合格後、検事に任官され、特捜部や刑事局付などのほか、在外研究員として米国に派遣されたり、金融庁に出向されたりするなど、過去には検事として幅広く活躍されていました。
その後、弁護士として西村あさひ法律事務所に入所されてからは、楽天関連会社の社外取締役を務めたり、経済産業省の研究会の委員に任命されたりしながら、日経ランキングの危機管理分野では2011年頃から既に度々ランクインされています。
深水 大輔弁護士
長島・大野・常松法律事務所に入所後、企業不祥事や企業犯罪の分野で活躍され、2019年からは同事務所のパートナーに就任されています。2015年には英国の名門大学であるキングスカレッジロンドンに留学してEU競争法を学ばれたり、米国の法律事務所で勤務されたり、海外でも活躍されています。
また、現在は信州大学で特任教授を務められ、企業犯罪に関する研究活動にも積極的に取り組まれています。
國廣 正弁護士
イソ弁として数年間勤務するところから出発し、米国ニューヨーク州の法律事務所での研修経験を経て、企業法務系の事務所に勤務された後、国広総合法律事務所(の前身)を立ち上げられました。その後、現在まで同事務所のパートナーを務められています。
また、山一證券の破綻後には内部調査委員として真相究明に貢献されました。
内閣府や内閣官房、消費者庁等にてコンプライアンス関連分野における行政の顧問を担当したり、過去には積水化学工業や三菱商事の、現在ではLINEや三菱UFJモルガン・スタンレー証券、東京海上日動火災保険の社会取締役又は社外監査役として企業のガバナンスにも尽力され、危機管理分野で活躍されています。
平尾 覚弁護士
1998年から2011年の弁護士登録まで、検事として在外研究員、刑事局付、特捜部などを経験されて、2015年からは西村あさひ法律事務所のパートナーに就任されています。
上記の経験を活かして、企業不祥事や危機管理分野をご専門とされるほか、近年ではDXやAI、Web3に関する著作や論稿を多く発表されたり、自民党のデジタル社会推本部のワーキンググループメンバーを務められたりして、デジタル分野でも活躍の幅を広げています。
ビジネスと人権
続いては、「ビジネスと人権」のトップ3の弁護士の方々です。
順位 | 名前 | 所属 | 役職 | 学歴 | 資格 |
1 | 梅津 英明 | 森・濱田松本 | パートナー | 東京大学、シカゴ大学 | 弁護士、ニューヨーク州弁護士 |
2 | 福原 あゆみ | 長島・大野・常松 | パートナー | 京都大学、ミシガン大学 | 弁護士 |
3 | 渡邉 純子 | 西村あさひ | アソシエイト | 慶應義塾大学、慶應ロー、LSE | 弁護士 |
梅津 英明弁護士
日本企業の海外進出にあたって数多くの助言を行い、ビジネスと人権分野に早くから取り組んでおられました。例えば、紛争地域からの撤退に際して企業が果たすべき責任などについて、人権の観点からの専門的な知見を有しておられます。そのため、昨年の日経の弁護士ランキングでは国際通商・経済安保分野で1位にランクインされていました。
他にも、経済産業省のサステナビリティ系のグループなどで複数回にわたって委員を務められています。
福原 あゆみ弁護士
司法試験合格後、2007年から検事として全国の検察庁に勤務され、2010年からは在外研究員として米国のロースクールに派遣されています。その後、2016年に長島・大野・常松法律事務所に入所され、2022年から同事務所のパートナーに就任されています。
検事の経験を活かして、企業の危機管理をご専門とされつつ、人権関係のコンプライアンス案件でも多く活躍され、経済産業省の人権尊重ガイドライン検討会でも委員を務められています。
渡辺 純子弁護士
2011年に弁護士登録されており、今年のランキングにランクインされた方々の中でも比較的若手でありながら、東南アジアを中心とした日本企業の海外進出関連の業務を行いながら、人権や環境にまつわるサステナビリティ系の分野で活躍されています。
近年では、経済産業省の繊維産業関連の委員を複数兼任されたり、西村あさひ法律事務所が編集したビジネスと人権関連の書籍で執筆を担当されています。
中国法務
最後は、「中国法務」のトップ3の弁護士の方々です。
順位 | 名前 | 所属 | 役職 | 学歴 | 資格 |
1 | 射手矢 好雄 | アンダーソン・毛利・友常 | パートナー | 京都大学、ハーバード大学 | 弁護士、ニューヨーク州弁護士 |
2 | 中川 裕茂 | アンダーソン・毛利・友常 | パートナー | 京都大学、イリノイ大学 | 弁護士、ニューヨーク州弁護士 |
3 | 江口 拓哉 | 森・濱田松本 | パートナー | 慶應義塾大学、ワシントン大学 | 弁護士、ニューヨーク州弁護士、ベトナム外国弁護士 |
射手矢 好雄弁護士
中国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、インドなどのアジア諸国における法務をご専門とされ、とりわけ中国法務については第一人者として様々な業績をお持ちです。
1991年から森・濱田松本法律事務所に勤務され、翌年1992年にはパートナーに就任されていましたが、その後2021年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所に移籍され、現在は同事務所のパートナーに就任されています。
また、2000年には一橋大学国際企業戦略研究科にて講師を務められ、2004年以降は一橋大学法学研究科の特任教授として、長く国際企業法務分野での教育にも従事されています。
中川 裕茂弁護士
中国、香港、台湾その他の東南アジア法務をご専門とし、中国やシンガポールの法律事務所での研修のご経験もお持ちです。2007年から2007年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所のパートナーに就任され、同年から2016年までは北京オフィスの首席代表も務められています。
また、2018年から2022年まで神戸大学法学研究科で客員教授を務められています。昨年の日経の弁護士ランキングでは、国際通商・経済安保分野で4位にランクインされていました。
江口 拓哉弁護士
中国およびASEANを中心として国際業務をご専門とされ、過去には米国やタイ、ベトナムの法律事務所にも勤務されていました。また、2018年からは森・濱田松本法律事務所がホーチミンオフィスを開設する際には、その代表に就任され、ベトナム外国弁護士にも登録され、中国のみならずベトナム法務でも目立ってご活躍されています。
2020年から2021年までは神戸大学法学研究科の非常勤講師も務められています。
まとめ
以上、2023年版の企業が選ぶ弁護士ランキングの上位にランクインされた方々についてご紹介してきました。どの方々も優れた経歴をお持ちで、積極的に活躍されていることがよくわかります。皆さんもぜひ参考にしてみてください。