みなさんは「司法試験考査委員」という言葉を聞いたことがありますか?
この記事では、司法試験を深く理解するために欠かせない役職である「司法試験考査委員」について詳しく解説します。彼らは司法試験の問題作成、採点、合否判定などを担う非常に重要な役割を果たしています。
具体的には、司法試験委員会の推薦により、法務大臣が任命する非常勤の委員です。この記事を通じて、受験生の皆さんが司法試験の仕組みをより深く理解する手助けになればと思います。
司法試験考査委員とは?
改めてになりますが、みなさんは「司法試験考査委員」をご存知ですか?
- 聞いたことはあるけどよく知らない・・・
- 「司法試験委員」との違いって・・・?
このような理解の方が多いのではないでしょうか。
しかし、せっかく司法試験を受験するのであれば、そもそもその試験を誰が作っているのか、知っておいて損はないと思います。そこで、本記事では、司法試験考査委員とは一体どんな役職なのか、簡単に解説していきます。
なお、「予備試験考査委員」についても基本的には以下の記述が妥当するので、予備試験を受験される方も本記事を参考にしてみてください。
概要
ここでは法律家らしく、条文から出発してみましょう。司法試験法15条に根拠があります。
(司法試験考査委員等)
第十五条 委員会に、司法試験における問題の作成及び採点並びに合格者の判定を行わせるため司法試験考査委員を置き、予備試験における問題の作成及び採点並びに合格者の判定を行わせるため司法試験予備試験考査委員(以下この条及び次条において「予備試験考査委員」という。)を置く。
2 司法試験考査委員及び予備試験考査委員は、委員会の推薦に基づき、当該試験を行うについて必要な学識経験を有する者のうちから、法務大臣が試験ごとに任命する。 3 司法試験考査委員及び予備試験考査委員は、非常勤とする。
司法試験法15条
条文の「委員会」とは同法12条の「司法試験委員会」のことで、任期2年間の非常勤の法務省設置委員会であり、実務家・学識経験者から構成され、司法試験の実施等を行っています。
例えば、試験の実施日程や実施形式のほか、科目ごとの出題範囲等を決定しています。要するに、司法試験委員会は、司法試験実施に関わるの全般的な事務を担っている組織です。名簿をご覧になってみると分かる通り、教科書や参考書などお名前をよくお見かけする大物の先生方も就任していますね。
これに対して、「司法試験考査委員」は、司法試験委員会の推薦により、司法試験の作問・採点・合否判定に従事する非常勤の法務省設置委員です。したがって、まさに「司法試験考査委員」こそが問題の作成に関わっているのです。
もっとも、司法試験考査委員の中にも
- 問題作成に関わる司法試験考査委員(問題作成担当考査委員)
- 採点に関わる司法試験考査委員
の2種類があります。
毎年、試験実施前に公表される名簿にはおよそ160名前後が、試験実施後・結果発表前に公表される名簿には250名前後が記載されており、前者が①と、後者が②と対応していると考えられます。
そのため、厳密には①の問題作成担当考査委員が作問者ということになると考えられます。
任期
司法試験考査委員は条文上も「試験ごと」、すなわち毎年度ごとに、任命されることになっています。もっとも同一の委員が2〜4年間ほど連続して従事する場合も多くあります。
なお、これに対して「司法試験委員」は2年間の任期が定められており、再任が認められています。
構成
条文には「必要な学識経験を有する者」とありますが、基本的には弁護士・検察官・裁判官の法曹三者か学者が任命されます。
具体的には、各科目ごとに、法曹実務家がそれぞれ約3-7名ずつ、学者が約3〜6名ずつ、任命されています。ただし、名簿上では行政官の役職名で出向中の検事が任命されている場合があります。また、司法研修所の教官からは多くの方が考査委員に任命される傾向にあります。
法科大学院制度との関係
新しい法曹養成制度として、新司法試験と同時に法科大学院制度が発足して以来、司法試験考査委員についても法科大学院での教育に従事する学者の方々が多く任命されてきました。
ところが、平成27年司法試験において、法科大学院教授から学生への試験問題の情報漏洩事件が勃発したのをきっかけに、いったんは法科大学院で指導を行う者を委員から除外することとされました。
しかし、法科大学院制度の教育効果や人員確保の観点から、そのような措置に反対する声が上がり、結局、再発防止の措置をとりつつ法科大学院の指導者も考査委員に任命されるようになりました。
そのため、司法試験考査委員は、情報漏洩等の再発防止のための遵守事項に署名することが義務付けられており、たとえば、以下のような制約が課されています。
- 自らの授業が司法試験対策に有用であると宣伝してはいけない
- 受験予備校等との関与ができない
- 法科大学院での授業は録音・録画等を行う
- 法科大学院での指導はオープンスペース等第三者の立入りが可能な場所で行う
- メールでの質問や回答等も第三者が受信等し得る状態で行う
このように、法科大学院で指導する者が司法試験考査委員となる必要性の観点から、情報漏洩等防止を行い、試験の公正性や公平性を担保する仕組みがとられています。
まとめ
以上、多くの方が余り詳しくは知らないであろう「司法試験考査委員」について解説しました。
司法試験を受ける方は、せっかくなので、どのような仕組みで、誰が問題を作っているのか知っておくのも大切かもしれません。司法試験考査委員に興味を持たれた方は、ぜひ併せて以下の記事も参考にしてみてください。